『天若有情』翻訳補足メモ。
歌詞の日本語意訳のみ知りたい方は前記事へ。
『天若有情』は中国ドラマ「王女未央」(原題「錦繡未央」)の主題歌。
耳なじみのよいメロディーと中国詩特有の完璧な韻の踏み方がすごいお気に入りなので日本語詞を検索したところ、え、ヒットしない…だと…??検索予測でるのに…??DAMにも入ってるのに…??そんなはずはない…。
ということで一生懸命訳してみました。拙さほとばしってて申し訳ないんですが、日本語で捉え直すことができて良かったかなと思います。未央の生涯と心情が見事にリンクされていて、訳しながら胸が詰まりました。ドラマもそろそろ佳境かな~、がんばれ~~がんばれ~~未央~(´;ω;`)
以下、歌詞の直訳と補足メモ。
Fēng yáng qǐ shí fánhuā luò jǐn
風 扬 起 时 繁花 落 尽
風が巻き上がった時 花々はひらひらと舞って
扬…上方向へのベクトル。(例:立ち上る、舞い上がる)
尽(盡)…すべて、ことごとくの意。
→「落了」ではないことから、花びらの絨毯というよりも「雨のように降りしきる花びら」というイメージ。扬と落の対比。
shuí zhíbǐ wèi nǐ huì dānqīng
誰 执笔 为 你 绘 丹青
(直)誰が文章にできるだろうか あなたが描いたこの名画を
(意)言葉を無くすほど美しい あなたがいるこの光景
执笔(執筆)…動:文章を(大人数で)書く。編纂する。
绘(絵)…動:絵を描く。
丹青…ものすごい技法で描かれた神絵。
→①「書く」と「描く」の対比、②詩の構造、③主語の「誰」より、「为(為)」をforではなく反語と推測。なのでここの「誰」はNobodyの意。
⇒前文を踏まえると、「花びらの雨があなたに降り注ぐ光景は、なんとも筆舌に尽くしがたい」という雰囲気になる。こっちの方が日本語らしいかな?
Yuè xià dú yǐng lèi shī qīngyī
月 下 獨 影 泪 湿 青衣
月光に影が一つ ぼろぼろの衣を涙で濡らす
月下…月の下だけでなく月光の意も。ドラマは月明かりって訳しててオシャンティー。
青衣…粗末な衣、下女の服の意。日本でも藍染は安価だったので庶民の強い味方。
湿…動:濡らす。この前イッテQでやってた。「湿布巾」でウェットティッシュ。
liúshuǐ bú fù yīshì shēnqíng
流水 不 付 一世 深情
(直)流れる水は留まることはない 一生深く愛します
(意)無常の世の中だけれど 生涯をかけてあなたを愛しましょう
→「流水」は『水五訓』などにあるように「様々に形をかえ、留めることができない」というイメージから移ろいゆく人・時間・物etc...によく使われるモチーフ。漢詩でめっちゃ出てくる「無常」の言い換え。
一世…一生。一がtheの働きをするときは「その時代」。
☞ちな、私の意訳では「洗いざらし」と「色褪せない」の色の濃淡でここのブロックを表現したかったので、ちょっとムリクリな意訳となってます。涙→流水、月の満ち欠けとかが時の流れが上手に散りばめてあって、ホント小憎らしくて素敵な詞だ。すき。
Zhīshēn huí wàng tài cōngcōng
隻身 回 望 太 匆匆
(直)一人振り返る あまりにも慌ただしい
(意)一人になって思い返してみる 本当に色々なことがあったと
回望…振り返る。= 回…back,return的な語 + 望…(動)遠くに目をやる、希望を持つ
cǐshēng duōshǎo qíng yǔ chóu
此生 多少 情 与 仇
この生涯にはどれほどの救いと憎しみがあっただろう
与…and,with的使い方をする。
→「情」という言葉を日本語に訳すとほんと難しい~~。loveとか 사랑해とかもそうなんだけど、愛情だけでじゃなく、友愛とか恩情とか感謝とかそういう色々が入ってて、なかなかピッタリの言葉を見つけられません。
→「多少」を感嘆文としたため上記の訳に。(通常、疑問文で使われるのでhow many, how muchと似た感じで使えて便利。)
☞この2節はたたみかける感じが欲しくて(曲の秒数的にも)無理矢理な意訳をしたけど、ドラマでも「愛と憎しみに満ちた人生」って訳してあったんで、良いよね。
zhǐ yuàn nǐ zhǎng xiàng shǒu
只 愿 你 长 相 守
(直)ただあなたと一緒にいたいと願う
(意)ただあなたと一緒にいれれば それで良かったのに
愿(願)…願う、望む、したいと思うetc...。positiveな行為に対する動詞。
☞直訳でも意味は通るんだけど、前2節を受けて補足的に言葉を足しました。
wúbiān sī yǔ xì rú chóu
无边 丝 雨 细 如 愁
降り続く霧雨は私の憂いのようで
无边(無辺)…はてしなく、どこまでも。「无」は天に似てるけど「無」って意味で全然違うのでややこしい~。また、範囲的に果てしないだけでなく、infinite的な始まりも終わりもない感じも含まれるみたい。
丝…生糸、絹糸。糸状のもの、細く長いもの。→「细雨」で細雨/霧雨の意味もある。
☞直訳すると「どこまでも続く絹糸のような雨は不安のように細かい」となって意味不明なので、「降り続ける霧雨のような(ずっと続いててしかもいっぱいある)私の不安」くらいでいいんじゃないかと思う。
cháo lái hán yǔ jǐ huímóu
朝來寒雨 几回眸
明け方には雨も冷たく変わって 辺りを何度も見渡してみる
朝來寒雨…これで一つのフレーズとして良く使われてますよね。「明け方になれば雨は冷たくなって」という意味。「雨は夜更けすぎに雪へと変わるだろう」の中国版って感じかな。違うかな。
回眸…眸は瞳の意(「凝眸远望」で目を凝らして遠くを見る)。これだけだと見返す、(後方を)振り返る、なので「几回眸」で何回も見返す→見回す、でいいんじゃないかと思う。どの翻訳辞典でもバチッとした対訳がないのが不明だわ~。
☞「見る」は「視」「望」=lookだけど、「眸」を付けることによって「注視する」=watchのニュアンスが加わる。
nǐ zài nǎ yīfāng tíngliú
你在哪一方停留
あなたは一体どこにいるのか
→これでも十分意味は通じるんだけど、「停留」は滞在=stayの意なので前節に合わせると「どこで雨宿りしているのだろう(雨に濡れていないといいけど)」でどうかな。
tiān ruò yǒuqíng yì wúqíng ài dào zuìhòu yào fēnlí
天 若 有情 亦 無情 爱 到 最后 要 分離
天の情けが有ろうと無かろうと この愛は最後には引き離されてしまう
若…若しくは。中学の漢文の授業でバカみたいに出てくる。そして発音が謎。
最后…最後。「后」は大方は後ろの意だけど妃の意もあるのでややこしいね。
nǐ lúnhuí de yìnjì
你 轮回 的 印记
(直)あなたが生まれ変わることを心に刻む
(意)あなたが生まれ変わっても 私は忘れることはない
→これ、ガチ直訳すると「あなたの生まれ変わりの印」ってどの翻訳機でも出てめっちゃウケたんだけど、確かにそのまま意味を拾うとその訳であってるんだな~~。
轮回…輪廻、(動)巡り回る。季節が巡るのにも使える。
的…めっちゃ使う言葉で「~な」「~の」「~もの」として日常会話頻出。私的には前の単語を強調(明確)にする働きがあるイメージ。
印记(印記)…(動)心に深く刻む、忘れないで覚えている。名詞だと跡、痕跡の意がある。
luò zài wǒ méiyǔ zhídào yǒu yītiān bùnéng hūxī
落 在 我 眉宇 直到 有 一天 不能 呼吸
(直)私の眉毛が抜け落ちて 呼吸が出来なくなる日になっても
(意)私が年老いて 息を引き取るその日が来ても
一…the。ほんとにthe。
直到… この時点でずっと動作(出来事)が行われてきた状態。~になっても。
☞漢詩みてると年老いた様子を「白髪」だけでなく「眉」でも表してること多いな~と思い、訳詞の方では2サビの「染尽我白发」と合わせて時間経過として訳しました。
wànzhàng hóng zuò wǒ děng nǐ
万丈 紅 坐 我 等 你
(意)この玉座であなたを待ち続けましょう
☞「万丈紅坐」を直訳すると「この上ない紅に座り」で意味不明なので、この上ない地位+紅は中国で一番尊い色+座る=「玉座」、と訳しました。日本人がイメージする玉座って一つしかないけど、中国・韓国ドラマを見るかぎり玉座はでかいソファっぽくて、皇后は皇帝の隣に座ってますよね。「坐」を生かして玉座でも良いかなと思うんですが、「王宮を離れずじっと待つ」というニュアンスが入った方が無難かなと思い訳詞の方はドラマを習って「この場所で」にしました。
yòng nǐ de qiānguà rǎn jǐn wǒ bái fà
用 你 的 牵挂 染 尽 我 白 发
(直)あなたのことを心配することで 私の髪は白く染まってしまいます
(意)私の髪が全て白くなっても あなたのことを案じています
用…(動)用いる。他にも色々意味があるけどこの「用」は「~によって」の意で、後文の「你的牵挂」全てに掛かり、「染尽我白发」の原因を示す。
牵挂…心配、気にかける。なので「无牵挂」で「心配ない=No problem」かと思いきや「意に介さない」「とらわれない」という意味になるので、どっちかというとcarefulのニュアンスが強い。
发…髪。
zhǐchǐ tiānyá nǐ zhōng wèi yuǎnlí
咫尺 天涯 你 終未 远离
(直)天の果ての果てでも あなたは終わらずに離れていく
(意)どんなに近づこうとも あなたは離れて行ってしまう
☞この一文を訳すのにホント苦労したんですが、二人を隔てる色んな障害を表現するピッタリな言葉がないものですかね…。ここまでくればもう安心だろう、と思ってもさらに離れて行ってしまう…。悲しみ。
咫尺…接近、至近距離。
終未…終わらない、未完成の意。日本語の終末にあたるのは「结论」「結果」など。
※随時、追記します。